◆ PAGE.1

◆ PAGE.2


エルフの隠れ家  −Elf Of Retreat−
◆EPISODE.2 神の力を狙う者(PAGE.1)
獣神剣士 暁PAGE.1PAGE.2

 真夜中の路地…男は怪しげな黒猫に訴えた。
「貴様、魔の者だな…?」
猫はフシャーッ!と威嚇する。黒いオーラも微かに立ち上っているようだ。
「負の魔物め…成敗してくれよう!!」
男は、なにやら札のようなものを取り出し、呪文のようなものを唱え始めた。おそらく、お払いのようなものでも始めるつもりなのだろう。呪術を使えるものを、神の血を引くものと断定できるのだが…この男、神の血を引く者ではあるようだが、どうやら然程濃い血ではないようだ。
猫は何食わぬ顔で必死に呪文を唱える男を見据え、呆れた様子で言った。
「検討違いだったようだな……妖の鼬よ。」
猫が低い声でそう言うと、暗闇からもう一つ気配が…人影が現れた。
「その名で呼ぶなと言ったはずだ。」
その声は幼い声。しかし殺気や妖気を含む声。まだ子供なのだろうが、その凄まじい力は、全身から湧き上がり相手に伝わっている程に持て余している様子だった。
「どうやらとんだカスだったみたいだな…時間の無駄だった。」
うざったそうに言うと、彼は暗闇の中へ去ろうとした。
「ま、待て!魔の者め…逃げる気か!?」
霊媒師の男が止めると、少年は露骨に舌打ちを響かせ振り返り。
「なにか用か?」
「まだ勝負は終わっていない!!」
男は駆け出した。そして呪術を込めたお札を、少年の額に叩き付けた。
「んなっ!?」
少年は声を詰まらせ、体を反らせ絶命した。
「………なんつって。」
…かに見えた。
「こんなショぼい呪術で、ボクを殺せると思ってんの?」
彼の目は殺戮を求む色に煌いた。美しくも怪しい光…彼の目には、目の前の敵の死しか映っていない。
「な…何故だ!?」
霊媒師は相変わらず疑問に溺れているようだが、それは少年の妖力が大きく上回っているだけだ。難しいことではない。
「そんなにわからないなら、ボクが力の差を教えてやるよ。」
少年は拳を構えた。なにやら怪しい力が込められていくようだ。
「くたばれぇ!!」
「ひぃぃ!!」
少年の目は狂気に満ち、人に恐怖を与えることに、人を死に至らしめることに快感を覚えているようだった。
 ピタ…
と、少年は翳した拳を、男の顔面寸前で寸止めした。
が………。
 ゴゥッ!!
彼の拳が止まったのは一瞬だけだった。その直後、なにか大きな力が男を吹き飛ばした。
 男は声にならない悲鳴を上げ、斬撃のような大きな圧力の前に、聞こえない断末魔と共に身を引き裂かれ…もはや見るに耐えない哀れな姿に成り果ててしまっていた。
「鼬よ…ちとやりすぎではないか?」
「ボクぁイライラしてんだよ。プライドでつっかかってくる呪術師が大嫌いなんだよ。」
少年は、霊媒師……だったものに吐き捨て、今度こそ、先の見えぬ闇の中へと消えていった。


 朝……。その窓から見える朝の日差しは淡く、黒雲で覆われ、異様なまでに暗かった。その黒雲は雨を降らし、その肌寒さが邪悪さを強調していた。オレは鳴り響く目覚まし時計の音と、頬にあたる感じなれない感触で目を覚ました。
「い…痛い……」
頬にあたるそれは、なんとなく尖って痛いような気がした。
「すぅー……」
鈍く痛みを与えるそれは…風雅の尖った耳だ。
「お…オイ風雅…耳…耳……」
オレは風雅の頭をのけるが、風雅はそれを嫌がってオレから離れようとしない。
「おい!いい加減にしろ風雅!!」
「…んぅ…?」
思わず叫ぶと、流石の風雅も目を覚ました。
「目が覚めたか?…なぁ…なんで昨日は普通だったのに、今日急に耳が長くなったんだ?」
まだ眠気眼な風雅に、オレは容赦なく質問をぶつけた。
「えっとね…人間から姿を隠すため。魔術を少し使うから、安全な場所では魔法を解いてるんだ。」
風雅の適切な回答に、オレはあっさり納得してさっさと着替え始めた。
「透って、意外とせっかち?」
「授業がオレを待ってくれないんでね。」
そういってオレが着替え終わると、風雅は急に声色を変えていった。
「授業…出てないくせに。」
鞄を取ろうとしたオレは、その手を止めて風雅をみた。
「なんで…しってんだ?」
「だから、言ったでしょ?ボクは神に使える者。神の力の継承者のことなら、なんでも知ってるんだよ。」
そう言って、彼はまた無邪気な笑みを見せた。お前ちょっと怖いぞ…?
「授業出ないぐらいなら、家にいた方がいいよ。今の君は、魔から狙われる身なんだからね。」
「なら尚更家にはいられねぇよ。こっから一刻も早く逃げなきゃな……」
本当は家にいても暇なだけなんだが…とりあえず風雅を納得させる為にもオレは嘘を吐く。
「でもさぁ…学校の人達まで巻き込むことになるよ?」
正直学校のやつらがどうなろうと、オレの知ったことではないが…仮にもオレは神器の後継者。流石に後継者を探している天の使いの言葉を無視したりすることも、神話を信じる者としてはどことなく抵抗がある。
しかし、オレはまだ魔物やなんやらと戦ったことがない。どれぐらいの頻度で魔物が現れるかなんて、想像もつかない。だが、今までなんの変哲もなくオレは人生を10年以上過ごしてきたんだ。今日に限って……とは思いながらも、オレは風雅に魔物はどれぐらいの頻度、数で現れるのか聞くことにした。
「なぁ風雅、魔物ってそんなに頻繁に襲ってくるのか?」
「そうだねぇ…普段そうでもないかもしれないけど、今焔の剣士は目覚めたて。紅暁刀が抜かれた時の力が魔の奴らに察知されていれば、もしかしたら戦いに慣れてないところを狙ってくるかもしれないから、今日は特に気をつけたほうが………」
と、風雅がたんたんと説明しているその時だ。
 キィィィイイイイ!!
「きゃああああ!!」
凄まじい車数台のブレーキ音と、多数の人が恐怖に叫ぶ声が窓から飛び込んできた。



Base template by WEB MAGIC.  Copyright(c)2008 エルフの隠れ家  −Elf Of Retreat− All rights reserved.