◆EPISODE.1 焔の剣士覚醒(PAGE.1)
獣神剣士 暁>PAGE.1>PAGE.2
そこは静かな学校の図書室だった。どうやら本を読みながら寝てしまってたみたいだ。
「夢……か。」
憧れのエルフに会えたのは、どうやら夢だったようだ。
自分…どんだけだよ。と呟いてみるが、それが全くの無意味だと言うことも何気に知っていた。
ずれた眼鏡を指で直すと、今読んでいた本を戻しに行った。
オレは…暁透。ごく普通…と言うわけでもない高校生。
オレはいつも、授業には出ずに図書室で本を読んでいる。神話や歴史たぐいのものが好きで、今では知らない神話なんてない程だ。図書室には、不思議なことにいつも先生がいない。先生がいつもいる準備室にもたくさんの本が並んでいた。
…表の神話類は読み尽くしちまったし、あの奥のも見てみたいな…
そんな好奇心から、あたりに人の気配がないのを確認して、図書室の奥の、いつもは生徒は入ってはいけない準備室に入っていった。
ほこりを被った本でいっぱいのその部屋は、やたら空気が重く、とてもゆっくりできそうな場所じゃなかった。読み甲斐がありそうな本を見つけて、さっさと戻ろう……
そう思って本棚を見上げて、ふと…目線をやや下に向けた。窓が少し開いていて、風が優しくそよぎ入ってきた。その風は、先生が呼んでいたと思われる机の上に置かれた、開かれた本のページをパラパラとめくらせた。…その薄く軽やかな音は、まるでオレを導いているようだった。
「獣神…伝説?」
本のタイトル部分には、そう表記されていた。やはり…オレにも知らない神話が、まだたくさんあるんだな…
そんな嬉しいような悔しいような気持ちで、その本を手に取り、もといた図書室へ戻った。
本を開くが、ほとんどのページがなくなっている。破けてなくなっているというよりも、ページはそのままに…文字だけがどこかに行ってしまったかのような本だった。
…これじゃあよめねぇよ…
そう思いながらも、文字が残っている最初の方から読み始めることにした。
獣神伝説……。
大昔…その国では、エルフと人間が共存し、それぞれの文化を伝え合い生きてきた。
人間は、食物を得る為の技術。
エルフは、武器や建物を造る技術や魔術。
互いは何年もの間、助け、助けられ生きてきた。
しかしある時…エルフは生き血を使い、人間の思い病や怪我を治していた。それは悪人に目をつけれら、エルフの生き血を売るために、エルフ狩りをした不届き者がいた。
エルフ達は怒りを露わに、その密漁師達を返り討ちにした。…が、人間たちは事情も知らずに、エルフ達を疑い、殺した。それはやがて、大きな戦になった。
そんな戦の中…自然界を創り、その平和を祈る神々が降り立ち、人間とエルフの怒りを静め、その怒りを繰り返さぬよう、二度と交わらぬよう、互いの領域を与えた。
こんな悲しい戦を繰り返すぐらいなら、共存など望まぬ。互いを居ぬ者として生き続けよ。
神々の涙は雨となり、戦の火をキレイに消し去った。犠牲を糧に、それぞれの罪を悔い改めよ……
そんな神々の願いは、長いこと叶うことなく…空を漂い続けていた。
それから百年以上の時がたち、神々の願い………
と、物語が展開する?しない?と言った微妙なところでページがなくなっている。普通なら、破れてるし…諦めるか。と本をかたすところだが、どうも片付けがたい……この続きを読んでみたい。今までの神話以上に、この「獣神伝説」…オレを引き込む何かがある。先生もいないし…持ってっちゃおっかな。
その本を片手に、オレは図書室を後にした…。
◆
『紅月町で、障害事件が起きました。被害者は、高校生の男子生徒三人。男子生徒三人は、現在も意識不明の重体とのことです。被害者と犯人が激しく争った形跡はほとんどなく、凶器も犯人の目星もたっていない模様………』
いい報告がないニュースなんて見てても面白くない。そう心で吐き捨て、オレはテレビを消した。
「ちょっと透!」
そう声を上げたのは、5つ年上の姉さん、千晶だ。
「最近は物騒だから、アンタも気をつけなよ。」
「わかってるって…」
イヤと言うほど聞いたニュースだ。今更注意しろと言われても、なんだか緊張感に欠ける。最初の方はわりとみんな騒いでたみたいだけど、最近誰もその話題を持ち出さない。ニュースで言っていた被害者っていうのは、実はオレが通っている学校の生徒だ。ろくでもない不良グループどもさ。
姉さんは気をつけろ…なんて言ってるけど、そんな姉さんに、そろそろ暗くなるであろう時間に買い物を頼まれた。
「じゃあ、お願いね。」
人事ですかっ!?言ってることとやってることが矛盾してる。
そんなことを愚痴っててもしょうがないから、オレはとりあえず買い物に行くことにしたのだった。
すっかり日も落ちて、薄暗くなってきた頃…オレはやっと買い物を終えて帰り道を歩いていた。
「まったく…人使い荒いなぁ、姉さんは。」
うだうだと文句を言っていると、例の不良達が通り魔に会った現場の路地裏に踏み込んでいた。これは…まずいんじゃないか?自分が襲われることよりも、オレが犯人にされないかどうかが一番心配だ。
「そこの君!」
警察だ。荒々しく声をかけてくるその警官は、明らかにオレを疑いの目で見ている。
「なっ、なんですか??」
思わずどもるオレ。そりゃあ警察に軽く怒鳴られれば誰だってビックリする。
「三日月高校の生徒だな?…そう力があるようには見えないが…君が暁透で間違いないな?」
暁透…間違いなくオレの名前だ。え、なんで?なんで知ってるんだ??
「何故オレの名前を!?」
「ここへ調査しに来る途中、ここに暁透と言う事件のことをよく知っている高校生が現れると、なにやら不思議なオーラの少年が教えてくれてね。念のため来てみたんだが…まさか見事的中するとはな。」
イヤ、普通そんな非現実的な話、大の大人が信じるか!?子供の言うことだって、小学生ぐらいならイタズラだって可能性もあるだろうが。
それにしても誰だ…?オレを知ってて、オレを犯人にしようとしているガキは。
「さ、とりあえず署まで来てもらおうか。」
「え、マジかよ。」
腕を掴まれたオレは、そのまま車に連れてかれた。イヤイヤ、ここで捕まったらその得体の知れないガキの思う壺だ。オレは咄嗟に体を捻り、警官のこめかみに痛恨の肘うちを食らわせてやった。
「ぎゃああああっ!?」
警官のくせに弱いヤツだ……
とりあえず警官が怯んでいる隙に、オレは道のりなんか関係なしに走って逃げた。
「ま、まてぇ!!」
弱りきった警官の声は、無我夢中で逃げるオレにはよく聞こえてなかった。
とにかく逃げた……今思うと、やってもいないことを問われて、何故逃げたんだと自分でも思う。でも、これもその不思議なオーラの少年という者に、手玉に取られた運命なのだと、後に知ることになった。
「クスクス…そうそう。その君の、眠ってた真価が見たかったんだ。」
後ろで誰かがオレを見ていた気がしたが、今のオレには特に意味もない、興味もないことだった……。
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