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エルフの隠れ家  −Elf Of Retreat−
◆EPISODE.4 親友と・・・(PAGE.1)
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 クリスは一度、とある兵士に殺されかけている。それが…今アレンの家に押しかけて来ている兵士だ。無精髭をはやした中年おやじ。武装姿に槍を携えた荒々しい外見だ。
「いえ…見かけませんでしたけど?」
アルナは至って冷静に男に言葉を返した。それを密かに見ていたアレンも一時、安心したように息を吐いた。
「そうですか…見かけましたら、至急知らせてくださいね。」
そう言ったが、兵士は一向にしかめっつらでアルナの前に佇んでいた。アルナは不快な気分に顔を歪めそうになったが、ここは堪えて冷静に質問した。
「あの…まだなにか?」
「いえね…ヤツのにおいが、するんですよ…」
「ヤツ?」
「銀色の目をした、オレの獲物です。」
兵士は、あきらかにクリスを狙っていた。銀色の目をした“ヤツ”なんて、エルフ意外に滅多にはいない。
その声を聞いたクリスは、アレンに必死に抱きついた。アレンはクリスを守るように抱き締めた。なおも外からの声はやまない。
「やっと尻尾を掴んだんだ…奥さん。ヤツを庇えばアンタもただじゃすまないぞ?」
兵士の言葉に、アルナは竦みあがった。それでも、クリスを庇うことをやめなかった。
「だから知らないって言ってるでしょ?」
二人の口論を聞いたアレンは、慌てて一階へ向かった。
「ロン…クリスを頼む。」
そう言って、アレンはロンティアにクリスを預けると、階段をおりて行った。そして、アルナを庇うように兵士の前に立ちはだかった。
「さっきからしつこいんだよオッサン…何時だと思ってんだ?」
恐怖などなかった。それは幼き故か、勇気故か…
「お前…どこかで会ったな…」
「ケヴィン・クロフォードの息子だ。アンタも兵士なら知ってるだろ?」
その名を聞くと、兵士は目を丸くした。
「あの裏切り者の……」
兵士の言葉に、アレンは怒りを露わに、目を見開き怒鳴った。
「父さんは裏切り者なんかじゃない!!父さんがしたことは正しいことだ!」
今にも兵士に襲いかかろうとするアレンを、アルナは必死に止めた。
「正しいかどうかは国が決めることだ。お前もケヴィンと同じように、エルフを庇って処刑されたいのか?」
…エルフ…その生き物は、人間の天敵。人間は戦争をおこしたエルフをけして許さない。
 今でもエルフが人間界に足を踏み込めば、人間達の餌食になる。
 エルフを庇う人間も、国側の人間にとって見れば、愚かな反逆者にすぎないのだ。
「隠しても無駄だぞ…エルフ独特の気配がお前に纏わりついてる。……ヤツと仲良くしている証拠…今ここで、ヤツと同じように処刑してやってもいいんだぞ?」
アレンは怯まなかった。なおも立ちはだかることをやめなかった。…しかし…命をかけるには若すぎる。母がそれを許すわけがなかった。
「アナタ、子供相手になにいってるの!?」
アルナは怒鳴り、アレンの前に立とうとするが…アレンは一向に、アルナを庇う姿勢を崩さなかった。しかし、兵士はその言葉に全く動じなかった。エルフを殺す為なら、幼い人間の命さえも犠牲にするほどの鬼人だ。
「素直にヤツをわたせば、アンタらは見逃してやる。……さぁ、早く!」
迷うアルナを横目に、アレンは叫んだ。
「知らないって言ってるだろ!?帰れくそじじぃ!」
父親の名も汚され、怒りも最高潮のアレンに、恐怖なんて言葉はどこにもない。
「いい加減にしろ小僧!そんなに死にたいのなら殺してやるよ!!」
「やめて!」
兵士は槍を振りかざした。アルナはアレンをかばおうと前に出ようとするが…アレンはそれを左手で止めた。アレンは槍の切っ先を睨み、微動だにせず佇んだ。その目には、怒りのほかに…なにか、憎悪のようなものも混じっていた。
 ガッ!
兵士が振りかざした槍が、誰かに掴まれ止められた。兵士は驚き、慌てて振り返った。
「た…隊長!?」
「そろそろやめておけ…確固たる証拠もないのに、むやみに人を殺すな。お前もただではすまないぞ…」
サラサラの青髪に、夜空色の瞳…その鋭い眼光は、アレンの記憶の中の確かな存在と類似していた。
「親父!」
二階の窓から声がした。…ロンティアの声だ。
 男に隊長と呼ばれた青髪の男は、やはりロンティアの父…リオン・ルアフィラだった。
「衛兵ならラファリエルの護衛を続けろ…お前の持ち場はここじゃないだろう?」
リオンの言葉を聞くと、兵士はアレンを睨みつけ去って行った。
「大丈夫かい?…すまんね…怖かっただろう?」
「別に……」
アレンの瞳は相変わらず冷静だった。恐怖のひと欠片も伺えない。
 痛みを感じることや死ぬことに関して、大きな恐怖や関心は見られないことがよくわかる。
「まだ若いんだ…あまり無茶するなよ。」
「それはアンタの息子に言うことだろ?」
アレンに図星をつかれたリオンは、一瞬眉間に皺をよらせ窓から顔を覗かせるロンティアを見た。
「はは…流石ロンティアの親友。」
「それは、アイツが自分でそう言ってるだけです。」
アレンは相変わらずツンツンしていた。それは素直じゃないだけのこと…
「アレン!失礼でしょ!」
アルナに叱られ、アレンはしばし反省した表情をした。
「いいんですよ。ロンティアも同じです…感情をうまく外に出せず、どこか冷たい人間になってしまっている。…うちもお宅も、片親だけと言うのが影響してるんでしょうかね?」
ロンティアもアレンと同じように、片親…ロンティアの場合は母親を亡くしている。元々アレンと仲良くしていたのも、もしかしたら母親がいるアレンが羨ましかったからかもしれない。
「そうかもしれませんね…でも、彼らはそれなりに成長している筈よ。…アレンも…」
アルナは…期待と愛が籠もった目でアレンを見つめた。するとアレンは、顔を赤らめ部屋に駆けて戻ってしまった。
「はははっ!素直じゃないが、わかりやすいなぁ。」
「あれはあれで、感情を隠そうとして逃げただけですよ。」
子供らしいシャイなアレンを見て、アルナはクスクスと笑った。そしてリオンは、アルナに「ロンティアをよろしく」と挨拶して去っていった。

「お兄ちゃん……」
アレンが部屋に戻ると、クリスが心配そうな顔でアレンを見つめた。
「大丈夫だよ、クリス。またアイツがお前を狙ってきたら、オレがなんとかするから。…な?」
クリスの頭をなで、笑いかけた。
 安心したのか、アレンの微笑みに答えるように微笑み、そのままアレンに身を任せ寝てしまった。
「ロン…オレたちも明日学校だし…寝ようぜ?」
「あぁ…」
そう会話をかわした二人は、すぐに寝る準備をした。
 アレンはベッドにクリスを寝かせその横に横たわり、ロンティアはアレンが用意した二段目のベッドに横たえた。…と、二人が寝る準備ができた瞬間だった。突然、ロンティアが思わぬことを口にした。
「なぁアレン……明日、学校サボってどっかいかねぇか?」
「はぁ?」
ロンティアの質問は、アレンにとっては非常識なものだった。ロンティアにとっては日常茶飯事だが、優等生のアレンには滅多にない。
 …が、意外にも不器用な不良の一言は、『常識』に飽きた天才の好奇心を駆りたたせた。
「いいかもな…たまには。」
二階のベッドにいて姿が見えないロンティアに、アレンは笑いかけた。
「じゃあ決まりだ♪…また明日な、おやすみ…」
「あぁ…おやすみ。」
クリスを起こさないように小声で言うと、二人は床に就くのだった。



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